地政学の論理(ショート)025:中東紛争の構造要因

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イラン戦争の直接の淵源は、ガザ問題をめぐるイスラエルとイランの対立です。それにまた核開発問題が重合しますが、あくまで根本の問題は〈パレスチナ問題〉です。つまり中東紛争の核心部と連動しています。それをまず忘れないようにしましょう。すると真の動因としての〈旧地政学=植民地帝国主義〉と、〈新地政学=戦後体制崩壊後の力の論理⇒ガザ平和評議会へ〉との共振が見え隠れしはじめます。この系譜上で、今回の戦争とその拡大の可能性をとらえる必要があります。整理してみましょう。

① 植民地帝国主義(旧地政学)の基軸は、資源地政学とそれをめぐる〈列強〉の闘争です。それがもっとも激しく行われた地帯の一つが中東でした。それはもちろん中東が石油産出の中心地であり続けたからです。このマクロの構図が、すべての中東紛争、そして今現在のイラン戦争の大前提です。
② つまり今現在のイラン戦争は〈核地政学〉と重合していますが、その歴史的淵源は石油地政学であり、また戦争の大きな影響がすぐにホルムズ海峡の封鎖から原油の価格上昇、そして世界的景気後退の見え隠れにつながるように、最大の動因はあいかわらず石油地政学であるという認識が重要です(それに他の地政学的要因が重合するという形です)。したがってこの基軸から、中東紛争の全体を理解しておく必要があります。
③ 〈核地政学〉と〈石油地政学〉の重合はすでにモデルがあります。それは二度のイラク戦争です。ブッシュ・ジュニア政権がフセイン体制の〈核疑惑〉を問題にして政権転覆を目指した大きな動因は、まさに〈中東石油〉の支配をめぐっていたことは、今現在はすでに教科書的な基礎知識です。しかしもちろん、今回の〈核地政学〉は疑惑の次元ではなく、実体的なものです(イスラエルの準核保有状態を含め)。繰り返しになりますが、この重合においてつねに主導的な要因は石油です。核ではありません(幸いにして、と言うべきかもしれませんが)。
④ 〈石油地政学〉を実体とする中東紛争は、シオニズムによる入植と、植民地列強との妥協が生んだイスラエル建国を淵源とします。イスラエル建国の背景には、もちろん欧米で根強かった反ユダヤ主義と、それが極端化したナチス・ドイツによるホロコーストの歴史があります。
⑤ これがイスラエルとパレスチナの確執の背景ならば、イランもまた植民地化すれすれの近代を潜り抜けた国家であり、石油国有化をめぐってクーデタを体験するなど(モサデク・クーデタ:1953年)、はっきりと帝国主義的支配の被害者でした。つまりパレスチナの側です。この近親性をはっきりと認識しておかねばなりません。
⑥ イスラエル、は反ユダヤ主義の被害者であり、それが入植運動を実体とするシオニズムを生みました。そしてその結果としてパレスチナ人の加害者へと変貌していきます。当初、国連決議が国家草創を可能にしたこともあり、まだ国連の仲介を有効視する政治勢力(特に労働党)も存在していましたが、中東紛争の激化の過程で〈力の論理〉を選択していくことになります(特に第二次中東紛争以降)。その帰結が、新植民地主義に他ならない〈ガザ平和評議会〉への参加(ほとんどその主導者)であるという現状へとつながります。
⑦ パレスチナ問題をめぐって、アラブ世界が団結するという構図は、中東紛争の基軸であり、つねにエジプトがその中心にいました(ナセルからサダトへ)。これが中東紛争の第一期です。そのエジプトが、国連ではなくアメリカの仲介を選択したことから、構図が大きく変容します(キャンプ=デービッド合意:1978年)。
⑧ この合意は〈二国間解決〉の大きな希望を生みました。これが中東情勢の第二期です(同じ時期にイラン・イスラム革命とイラン・イラク戦争が始まりました)。その後すぐ、アメリカの右傾化が始まり(レーガン政権)、パレスチナとイスラエル内部の分裂もあって、二国間合意は結局形骸化していきました。
⑨ 続く時期は、二度のイラク戦争、アフガン戦争の時代です。この第三期において、アメリカと敵対したイランが、〈パレスチナ問題の盟主〉として登場します。そしてこの構図が今現在も続いています。パレスチナをめぐっては、イランとヒズボラ、フーシ派が、イスラエルおよび〈ガザ平和評議会〉と対立しているという構図です。
⑩ この三期を概観してみると、そこには五つの紛争要因が構造化していることに気付かされます。

(1)イスラエル建国以来の軋轢:これは現在ガザのパレスチナ難民をめぐる紛糾に収斂しています
(2)イランの核開発:これは核疑惑ではなく、すでに北朝鮮と同じく実体的な開発計画です。つまり完成までのタイムリミットが存在します。そして準核保有国であるイスラエルの戦略的構図も、大きく関係します(中東で唯一の核保有国であり続けようとする野心)
(3)シリアのアサド独裁体制の崩壊:これで変化した中東の情勢が、前回の〈十二日戦争:2025年6月〉の一つの伏線となりました。イランはロシアとは異なる力学から(イスラエルへの軍事的圧力を強めるために)、基本的にアサド政権を支持していました。
(4)イエメンの原理運動、フーシ派との連関:フーシ派はイランやアフガンのタリバンと同じコンテクストでの原理運動、宗教国家の自立を目指す反乱運動で、イランのシーア派の分派、あるいはイランの政治的同盟者と見られることの多いグループです。その内情はかなり複雑ですが、アメリカはともかくイランとの同盟関係、イスラエルとの敵対関係において、繰り返し攻撃を行っています。これにまた最近では、イエメンをめぐるサウジとUAEの対立が加わります(これもまた別箇にまとめるべきテーマかもしれません)。
(5)スンニ派(イスラム多数派)のパレスチナ支持離れ:これは数十年をかけて基調が決まってきた趨勢です。この趨勢は、現在では中東における一種の安定化要因として働いていますが、それが今回の全面戦争で1.シーア派(およびフーシ派)⇔スンニ派のイスラム二項分岐をさらに際立たせるのか、あるいは逆に、2.〈イスラムの大義〉の一致団結の宗教イデオロギーが復活する可能性があるのか、これが根本の問題のようです。

⑪ この地域紛争の構造要因を、さらにマクロの地政学的構図の上に置いてみましょう。マクロ地政学との関わりは三つあると思います。

A:イラン・中国・ロシア・北朝鮮⇔イスラエル・アメリカ・西側諸国:
この場合、アメリカの地政学的戦略が初期の焦点になります。アメリカがなんらかの理由でイスラエルから離れ、イスラエルが孤立するのか、あるいはアメリカ=イスラエル同盟が西側の広い支援を得られるのか。逆にイランはこれまで通り中国・ロシアの支援を期待できるのか。孤立しないですむのか。これらの二項分岐のからみあいが、マクロの方向を決定していくと考えられます。
B:ウクライナ戦争との連関:
これはまずロシアの位置が問題です。イランがウクライナ侵攻を助けた見返りとして、具体的な軍事支援をイランに対して行う余力があるのか。逆にウクライナは情報・軍事等でイスラエルを支援する可能性があります(イランのドローン攻撃のことを考えてもその可能性は否めません)。これは一種の〈代理戦争〉の構図です。
C:トランプ政権の迷走:
今現在はイスラエル支持が基調ですが、今回の軍事作戦に関しては、これまで以上に迷走が始まっています。作戦の展開を一つの〈戦略〉としてとりまとめる意識がほとんど皆無なのが最大の問題かもしれません。それ今後の大きな不確定要因となっていくでしょう。

現時点での大枠の分析は以上です。分析というよりは、各モメントのマクロの配置の確認にすぎませんが、しかしこれがまず必要な作業ではないかとも感じているのです。
大戦傾斜の状況が加速するのか、鎮静化の可能性はまだあるのか、緊張感をもって、引き続き観察を続けることにしましょう。

関連動画:
〈地政学の論理020:イラン戦争と中東戦争〉

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