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ニューヨーク出身の駐在員であるケンジが東京のスーパーで買い物をする際、決まって目にする安心感があった。それは卵の値段だ。10個入りのパックが、いつも¥250前後で売られている。天候や世界情勢が荒れても、この卵の価格だけは微動だにしなかった。日本の消費者は、卵を生活の「基盤」として、長年安定した価格で享受してきた。
彼は故郷アメリカでの「エッグフレーション（卵高騰）」のニュースを思い出した。鳥インフルエンザの波が来るたびに、スーパーの棚から卵が消え、価格は一晩で２倍、３倍に跳ね上がった。毎日の食卓に欠かせないものが、突然の贅沢品になってしまう、あの不安定さ。
ケンジは、いつも通りの安定した価格で売られている卵のパックを手に取った。この、ごく日常的な安定こそが、彼が日本で得た最も大きな安堵の一つだった。ここでは、卵は心配の種ではなく、ただ純粋な、頼れる食料品なのだ。
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