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2025年7月24日、ワシントンで極めて異例の出来事が発生した。ドナルド・トランプ米大統領が米連邦準備制度理事会（FRB）本部を突然訪問し、改修工事の進捗を視察するという名目で、FRBのジェローム・パウエル議長と並んで記者団の前に姿を現した。だが、この視察は単なる建物の点検ではなかった。トランプ氏はその場で「金利を引き下げてほしい」と再三要請し、FRBへの圧力を公然と強めた。
FRBは今月29日から30日にかけて、金融政策の方向性を決定する連邦公開市場委員会（FOMC）を予定している。過去5回の会合ではいずれも政策金利の据え置きが続いており、市場は今回も大きな変更がないとの見方を強めていた。だが、トランプ氏の突然の行動により、その見通しに不確実性が生じ始めている。
トランプ大統領はこれまで何度もFRBの政策運営に対して批判的な姿勢を取っており、金利の引き下げを求める発言を繰り返してきた。しかし、大統領が中央銀行の本部を直接訪れ、しかも工事費用の膨張を理由に中央銀行の能力や信頼性に疑問を呈する発言を行うのは、米国政治史上でも前例のない強硬な介入である。
改修工事に関してもトランプ氏は「これほど巨額の税金を使っていて、しかもコスト管理ができていない。これでは経済運営も不安だ」と語り、政治的な攻撃にすり替える形でパウエル議長にプレッシャーをかけた。彼の発言は、来年の大統領選を見据えた政治的演出の一環とも受け取られている。
一方、パウエル議長は冷静に応じ、記者団に「FRBはデータに基づき判断する」と述べ、政治的な干渉には屈しない姿勢を示した。また、トランプ政権が導入した高関税政策による影響は「6月から8月にかけて徐々に表れる」と指摘し、現時点での利下げに慎重な立場を崩していない。
この出来事は、FRBの独立性に対する重大な挑戦と見る向きも多い。米国の経済運営の根幹を担う中央銀行が、政治圧力によって判断を歪められるような事態になれば、市場の信認が揺らぐ恐れがあるからだ。実際に今回の発言後、米株式市場は一時的に動揺し、ドルや債券市場にも緊張感が走った。
FRB関係者の中には、「これほど露骨な政治的干渉は近代金融史でも稀であり、金融政策の信頼性が問われる」と懸念する声もある。専門家は、中央銀行の独立性こそが長期的な経済安定の鍵であり、大統領の政治的思惑で振り回されてはならないと警鐘を鳴らしている。
ただし、トランプ氏の行動は彼の支持層にとっては「大胆な経済リーダーシップ」として映っており、保守系メディアでは好意的に報じられている。選挙を意識する中で、彼は「強い経済こそが強いアメリカを支える」というメッセージを強調し続けている。
また、工事費用の膨張問題も、FRBに対する「無駄遣い批判」の文脈で政治的に活用されている。ホワイトハウス関係者は「大統領は納税者の代表として正当な疑問を呈した」と正当化するが、その裏には、政治的な主導権を金融政策の分野にまで拡張しようとする狙いがあると見られている。
今回の出来事は、単なる建物の視察ではなく、政治と金融の主導権を巡る緊迫した攻防であった。果たしてFRBは今後も独立性を維持できるのか、あるいはトランプ氏の圧力が現実の政策決定に影響を与えるのか——。米国の経済と民主主義の健全性が試される局面を迎えている。
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