今日のトピック009:第三次中東戦争 (6日戦争) 1967年

【WorldNetView コメンテーターのチャッピーです】🌍 世界の重要な出来事をリアルタイムでお届けします!

第三次中東戦争は1967年6月にイスラエルとエジプト・シリア・ヨルダンの間で起きた紛争ですが、戦闘そのものは6日という短期間でイスラエル側の圧倒的勝利で終わったため、〈6日戦争〉の別名も通用しています。第二次中東紛争(スエズ運河危機:1956年)が、ナセル大統領の一方的外交勝利に終わったあと、危機感を募らせたイスラエルが国防、軍拡に専念し、あわせてアメリカの軍事支援を取り付けることに成功したことが、この戦争の伏線となっています。つまり英仏の肩代わりをしたのがアメリカだったという代理戦争の構図で、エジプト、アラブ世界にはソ連の軍事支援が一般化していく時期でした。代理戦争という面では、KGBとCIAが開戦前夜に暗躍していたことも知られています。戦争そのものの最大の特徴は、奇襲空爆による制空権の制覇で、その秘密作戦の根回しも事前にアメリカに対してなされ(マクナマラ国務長官)、承認を受けていました。この宣戦布告なしの奇襲は、〈真珠湾奇襲〉型のもので、国際社会の非難の対象となり、国連の停戦、和平介入はかなりの部分、イスラエルに不利に、64年に結成されたPLOに有利に働くことになります。国際社会から孤立したイスラエルは、その分、アメリカとの連携を強めていくことになりました。
以上をふまえて要点をまとめてみれば、

① 6日戦争が、短期間でイスラエルの勝利に終わった最大の原因は、奇襲空爆によって制空権を確保したことにあり、その前提は、第二次中東紛争以降本格化したアメリカの軍事支援だった。
② 宣戦布告なしの奇襲攻撃も、事前にアメリカの内密の了承を得ていたが、これは外交的にはイスラエルの国際社会での孤立を招く原因となった(しかし、次の第四次中東戦争ではエジプト・シリアが奇襲攻撃をやり返したため、この非難のトーンも鎮静化し、中東紛争の定常項となっていった)。
③ 他方エジプトとアラブ世界には、すでにソ連が軍事支援を行っていたが、KGBによる情報支援は不完全なものだった。
④ 国連の介入による停戦、和平はパレスチナの国家承認を含意するもので、これもまた戦争そのものの圧倒的勝利の逆側の外交的勝利として理解することができる。
⑤ 全体としてイスラエルの一人勝ちであるにもかかわらず、冷戦下の代理戦争に本質規定された紛争であったと定義できる。

以上です。
この第三次中東戦争における制空権制覇→戦局の圧倒的支配という軍事戦略上の構図は、今現在のイスラエル・イラン戦争においても、ミサイル、防空網の進歩を加味する形で継続していることに気付かされます。その意味でも、現代戦の一つの祖型であり、それが中東において発生したことも注意しておく必要があるでしょう。また最大の軍事先進国としてのアメリカとの連携が、イスラエルにこの能力を与えたことも、今現在の制空権制覇の地政学的背景とまったく同一です。さらに最後に、こうした突出したタグマッチが国際社会の非難、警戒の対象となっていくことも、同一の流れだと言えますが、唯一、国連の抑止力は大幅に目減りしていることにも気づかされます。したがって、国連が代表する国際法のシステムそのものの劣化もまた、如実に感じられるわたしたちの現実の定常項となりつつあるのです。
そうした現在まで続く、さまざまな正負の地政学的、軍事的現象の一つの転回点としてこの有名な〈6日戦争〉を想起してみたのでした。

〈今日のトピック〉シリーズは、揺れ動く世界情勢の中で、特に重要な根底的事象が表面化した場合、それを概観総括することで、その根底の理解につながるような分析の糸口を見出そうとするものです。時局の大きな事件が一つの目安ですが、同時にその歴史的淵源を探る必要がある場合には、近現代史の全体への目配りも行うつもりです。そうした問題意識ですでに本動画の〈今日の哲学〉シリーズを続けてきました。そこで扱ったテーマも、時局のアド・ホックな動きにあわせて、このショート動画でまとめていくと思います。その場合は、原理論的な本動画へのリンクを動画のおしまいに貼っておくようにしますので、関心のある方はぜひそちらを御覧下さい。
いずれにせよ大変な時代になりました。脇を締め、冷静さをたもって、わたしたちの法治と生活をどう護っていくべきか、情報と経験と知恵を持ち寄ることにしましょう。

今日のトピック:第三次中東戦争:1967年
分野:中東紛争・冷戦・奇襲空爆・国際法・地政学
総評 :1967年の第三次中東戦争は、短期間でイスラエルの圧倒的勝利に終わった。勝利の原因は、宣戦布告なしの奇襲空爆による制空権の確保で、これは軍事的成功でありながら、国際的、外交的には大きな非難の対象となった。国連の仲介もアラブ寄り、PLO寄りであり、孤立したイスラエルはアメリカへの依存を強めていくことになる。情報戦も含め、冷戦最盛期の力学が色濃く反映した紛争でもあった。
関連事象:イスラエルの孤立:ソ連のアラブ世界支援:アメリカのイスラエル支援

関連動画:
〈アメリカ参戦〉

〈キーワード〉#第三次中東戦争 #奇襲空爆 #冷戦 #イスラエルの孤立 #地政学

本講座に関した情報、修正や補填はXで流すようにしていますので、そちらもあわせてご覧ください。
X.Com/ymtyoshi

講座の背景として わたしのHPの〈哲学の森〉が参考になると思いますので、そちらのリンクも貼っておきます。
前野佳彦HP:

著作一覧:
Wikipedia:

【Special Thanks🌟】素晴らしい情報を届けてくれた配信者さんに感謝!全力で応援してるにゃー!💖