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ウクライナ戦争は、すでに五年目に入ってしまいましたが、今またイラン戦争が始まりました(2月28日)。二つの戦争はすでに昨年の〈十二日戦争〉(2025年6月13日~25日)の時点で、複雑な連鎖の可能性を示していましたが、今現在、イラン戦争の緒戦の段階で、すでに様々な地政学的化合と離反が生じ始めています。その中に〈大戦への傾斜〉のモメントがどの程度含まれているのかが最大の問題ですが、まず事態を概観し、冷静な分析の準備を始めてみたいと思います。
まずウクライナ戦争開始時点での、ウクライナをめぐる地政学の構図とイランをめぐるそれとは、いくつかのモメントにより確実に連結されていました。整理してみると、
1.まず石油です。ロシアは石油と天然ガスの供給を通じて、ヨーロッパとの産業複合体を形成していましたが、それが開戦からの制裁措置によって滞ります。この制裁は、ある意味で、イランがイスラム革命以来四十年間体験してきたグローバリズムからの疎外の繰り返しでもありました。イランがロシアと中国に接近したのも、輸出のオプションが提供されたからです。ウクライナ戦争以来、ロシアとイランは同じ側に立って、制裁回避の工夫を続ける仲間となりました。両者の後ろ盾は中国です。したがってウクライナ開戦は、すでに存在していたイラン=ロシア=中国のタイを、より一層緊密にする作用を果たしました。
2.次に〈新・非対称戦〉のモメントが加わります。非対称戦は、従来は正規軍に対抗するゲリラ戦法が主体でしたが、ウクライナ戦争で急速に進展したのはドローンを中心とする戦闘法全般の非対称化です(これを一応〈新非対称戦〉と命名しておきます)。ドローン戦の緒戦で苦戦に陥ったロシアは、イランからシャヘド・ドローン(遠距離対地ドローン)の大量供与を受けることで、拮抗状態に戻すことに成功しました。その後、自力での生産を始めたロシアは、このドローンを中心にインフラ攻撃を続け、それはロシアから見ての〈消耗戦〉の重要な基軸となっています。この結果、ウクライナ戦争の過程のみで、イランとウクライナは潜在的な敵対関係に入りました。
3.よりマクロの構図としては、〈代理戦争〉の重合を挙げておくべきです。ウクライナ戦争は、少なくともバイデン政権当時は、アメリカ/ヨーロッパ⇔ロシアという代理戦争の構図で戦われました。つまりNATO vs ロシアということで、これは当初からウクライナのNATO加盟が大きな焦点となっていたことの、戦争による表現でもあります(加盟を妨ぐために戦争を始めたというモメントも見逃すことはできません。戦争中は、NATO加盟は不可能だからです)。ロシアが経済的に苦境に陥ると、中国の隠然たる支援が始まりました。そしてさらに兵力の不足は北朝鮮が積極的に補うことで、〈消耗戦〉の構図が完成しています。つまりそれは典型的なマクロの〈代理戦争〉の構図に収まります。そしてこのマクロ地政学の二項分岐は、イランをめぐる地政学そのものでもありました。イランは石油制裁回避のために中露に接近し(接近せざるをえず)、アメリカ/西側⇔イラン/ロシア/中国/北朝鮮という構図が、ほぼ四十年間の中東情勢の定常項となりました。
こうしてイラン戦争が始まり、さらに複雑な地政学的化合が開始されたわけですが、それはウクライナ戦争の、戦局自体にも反照しはじめています。この過程を次に概観してみましょう。
① ウクライナ戦争の現状は、〈消耗戦の最終局面〉と総括できます。短期的な最大のポイントは、ロシアの石油制裁解除です。イランのホルムズ海峡封鎖に伴う国際原油価格の上昇が、イラン戦争緒戦の焦点となっていますが、その緩和のために、トランプ政権はすでに制裁の一部解除を決定しました(3月12日)。すぐにゼレンスキー大統領はそれを批判し、ロシアがそれによってウクライナ戦争継続のための莫大な資金を得るだろうと危惧しています。イランの海峡封鎖や、中東の石油施設への攻撃は、〈生存のための戦い〉の重要な戦略的要素として理解すべきもので、つまりはアメリカとイスラエルに戦争中止の国際世論の圧をかけるためのものです。それはもちろん、ウクライナを直接のターゲットとしたものではないにせよ、副次的な効果としてロシア原油の値上がり、それによるロシア経済苦境の一時的緩和は織り込み済みだったかもしれません。それが制裁解除につながるならば、これはロシア=イランのみならず、石油確保に苦しみはじめた中国にとっても朗報となるはずだからです。
② 今回のイラン戦争の基底部にも、もちろん石油地政学があるわけですが、その力学が早速こうして顕在化し始めた感があります。もともとトランプ政権は、ウクライナ和平への介入により、ロシアとの裏取引を画策し続けました。その最大のカードが、この制裁解除でした。しかしそれは同時に、ロシア=中国の連携にとって大きくプラスに働きます。したがってこの二つの相反するパラメータの間での妥協点を見つけることが、今現在のホワイトハウスが自己設定する課題だということになるでしょう。オブザーバーのわたしたちの立場からは、このパラメータがロシア有利・中国有利に振れるのか、ロシア(ある程度)有利・中国不利に振れるのかが一つの分かりやすいメルクマールになると思います。つまりアメリカの対中戦略がすべてに優先するのかどうかという、〈新モンロー主義〉の基軸設定の力学、それに対するメルクマールが、対露石油制裁の解除だということです。
③ 制裁解除はその広さ、長さによってウクライナ戦争全体に及ぼす影響は部分的にも全体的にもなりえます。今現在は、イラン戦争の出口がまったくわからないため、はっきりとは言えませんが、もし決定的な要因となる程度に制裁解除がロシアのプラスになり始めるならば、〈消耗戦〉は確実に元の姿にもどって長期化すると思います。ウクライナの反抗も、残念ながら部分的に終わるでしょう。
④ ただしロシア内部の不安定要因は拡大し続けています。それはクレムリンの内政外政の施策の不整合と、国民の不満に分節されますが、これが合体した時が、現政権にとっての最大の危機ということになるでしょう。ここで一つのメルクマールは、今現在開始されたモスクワを含むインターネットの停止です。これはクーデタ対策であるか、国民のデモ対策である可能性もあるので、今後しばらく注視が必要だと考えています。おそらく徴兵を始める時期を見計らっているのかもしれず、それもしばらくすれば結論が出るでしょう。
⑤ 即物的な影響としては、武器弾薬の備蓄がすでに変容を始めています。アメリカは防空ミサイルの不足から、ウクライナへの供給を減少させるか停止するでしょう。逆側にイランのシャヘド・ドローンの供給問題があり、イランはロシアに回す余裕をほとんど持たなくなることが予測されます。つまりどちらにとっても、兵站の減少につながり、これが〈消耗戦〉の全体にどう影響するのか、この点もしばらくすれば何らかの方向が見え隠れし始めるでしょう。
⑥ 隠れた、しかし大きな問題としては、核拡散と核戦争の危険があります。これも再びドミノで、イラン戦争とウクライナ戦争は連結されています。ロシアが、ウクライナ戦争において再三核使用をほのめかし続けていることと、準核保有国であるイスラエルの居丈高な戦略はパラレルですし、逆側のイランとウクライナも、共振共鳴的に連動する可能性があります。つまりイランが核保有に踏み切り(今はその寸前だというのが大方の見方です)、それが何らかの〈実効性〉を持つならば(つまりイスラエル、アメリカに対して抑止的に働きうるならば)、ウクライナも核保有をオプションとして考え始める可能性が出てきます。これはすでに西側の軍事援助の遅滞をめぐって、戦争初期にゼレンスキー大統領が示唆した方向性でもあります。ウクライナは、ブダペスト合意(1994年)によって、主権保全(=国境保全)と引き換えに、大量に配備されていた核兵器をすべて廃棄したという近い過去があり、それが無残に踏みにじられることで今回の戦争が始まった事情がある以上、このオプションはこれからも長く、ウクライナの政権中枢に浮かんでは消えることになるでしょう。
だいたい以上のようになるかと思います。いずれにせよ、二つの本格的全面戦争の連鎖、地政学的なドミノはすでに始まっています。このドミノを抑止するための手段があるのかないのか、それをわたしたちも真剣に考えなければならない時期にさしかかったようです。
関連動画:
〈地政学の論理030:ウクライナ戦争とイラン戦争〉
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